『処遇改善上げたから全体としてはプラス』は本当?
2024年度の介護報酬改定が行われ、訪問介護の基本報酬はまさかのマイナス改定でした。
訪問介護の減額について、武見厚労大臣は会見で、「基本報酬は減額だが、処遇改善加算はプラス、全体としてはプラスの改定とした」と説明した。
これ、嘘です。
計算してみましょう
例えば2023年度の場合で、処遇改善加算がⅠ(13.7%)、特定処遇改善加算=Ⅰ(6.3%)、ベーブアップ加算2.4%、地域区分がその他(✕10)の事業所があったとします。
・加算部分を合算すると、13.7+6.3+2.4=22.4%となります。
以下に比較した表を作りました。
2023年まで | 2024年以降 | |
処遇改善加算Ⅰ | 13.7% | なし |
特定処遇改善加算Ⅰ | 6.3% | なし |
ベースアップ加算 | 2.4% | なし |
介護職員等処遇改善加算Ⅰ | なし | 24.5% |
加算合計 | 22.4% | 24.5% |
身体1時間の基本単位 | 396単位 | 387単位 |
身体1時間の加算単位 | 88.7単位 | 94.8単位 |
身体1時間の合計単位 | 484.7単位 | 481.8単位 |
身体1時間の売上 | 4,847円 | 4,818円 |
加算率 | -0.6% |
処遇改善がプラスされていても間違いなくマイナス改定です。
大臣の発言は訪問介護に限定している場面と全体をわざとごちゃまぜにしていますね。大臣の発言に(主語)を付け加えると
「(訪問介護の)基本報酬は減額だが、(訪問介護の)処遇改善加算はプラス、(介護業界)全体としてはプラスの改定とした」ということでしょう。
『(訪問介護の)基本報酬は減額だが、(訪問介護の)処遇改善加算はプラス、(訪問介護)全体としてはプラスの改定とした』とは言っていないのでしょう。
実際にマイナス改定であることを立憲民主党石橋通宏議員が追求した際には
「訪問介護については基本報酬の見直しを行いつつ、処遇改善加算については他の介護サービスより高い加算率を改定する。これは基本的な話でず~っと申し上げている話であります」と言って居られました。
「見直し」とは言いましたが「増加とは言っていない」し、「改定する」とは言いましたが「引き上げるとは言っていない」のです。
官僚は本当に頭が良いですね。これ、
「訪問介護については基本報酬の減額を行いつつ、処遇改善加算については他の介護サービスより高い加算率なので減算する」を実行しても「訪問介護については基本報酬の増額を行いつつ、処遇改善加算については他の介護サービスより高い加算率をより強化する」としても、片方だけプラスして片方減額しても、
「基本的な話でず~っと申し上げている話であります」が使えるんですよね。
どう転んでも一貫性を持たせる事ができる実に上手な物言いをしているのです。
多くの事業所が処遇改善Ⅰ⇒Ⅱに下がる
介護職員等処遇改善加算はで加算Ⅰを取得するには特定事業所加算Ⅰ~Ⅱを取得する必要があります。
処遇改善加算Ⅰを取得していた事業所は約75%ありましたが、特定事業所加算を取得している事業所は40%。
そのため、処遇改善加算Ⅰを取得していた事業所の約半数が処遇改善加算Ⅱに加算率が下がります。
実際、処遇改善加算Ⅰの取得を予定している事業所の割合は75%→37%に大幅ダウンしています。
基本報酬引き下げ時点で赤字なのに、加算率が22.4%に下がるのですから、ダメージはでかいです。
2023年まで処遇改善Ⅰを取っていた事業所が処遇改善Ⅱに落ちることで、どれくらいマイナスになるのか計算してみましょう。
2023年まで | 2024年以降 | |
処遇改善加算Ⅰ | 13.7% | なし |
特定処遇改善加算Ⅰ | 6.3% | なし |
ベースアップ加算 | 2.4% | なし |
介護職員等処遇改善加算Ⅱ | なし | 22.4% |
加算合計 | 22.4% | 22.4% |
身体1時間の基本単位 | 396単位 | 387単位 |
身体1時間の加算単位 | 88.7単位 | 86.6単位 |
身体1時間の合計単位 | 484.7単位 | 473.6単位 |
身体1時間の売上 | 4,847円 | 4,736円 |
加算率 | -2.3% |
加算合計の数値が両方22.4%でが変わらないため、基本報酬の減額分がほぼそのままマイナスとなります。
(厳密には-2.27%-0.027%=-2.297%≒-2.3%)