サ高住の給与は2倍?
以前の投稿で述べてきた通り、サービス付き高齢者向け住宅は50%が純利益として残る夢のようなビジネスモデルです。
従来型の訪問介護に比べ、同じ時間での介護士の売上が2倍~2.5倍程になる為、その売上を介護士に還元できればとても高い給与に設定可能なはずです。
従来型の2倍の給与を支払っても交通費などを考慮しないで済むので利益が多く残るはずです。
でも、実際には従来型訪問介護の従業員と比べて1.3倍程の給与にしかなりません。
その理由は『訪問介護で得た利益を他に回しているから』です。
サ高住では『ケアマネ』『看護師』等、介護士以外の上級職が関わっていますし、その上級職に関する支払いや経費はその事業単体で事業所が受け取る報酬を超えている事が多いです。また、受付や事務員等といった売上に直結しない赤字部門も抱えています。それに加え、エリアマネージャーや取締役・監査役・顧問等、上の職種や肩書が多くなります。そちらにも当然お金を配分しなければなりません。
また、他の部署とのバランスもあります。訪問介護だけを切り離して考えるのであれば、1人の介護士の売上が100万/月あるなら、介護士の給与を60万円/月、管理者の給与を80万に設定は可能かもしれませんが、同じ会社で働くケアマネの月収が25万円固定で介護士の給与だけ上げ続けるというわけには行きません。
その他にも利用者を集めるために低めに設定した食費や家賃、利用者が埋まらない等があれば赤字を生み出す要因となります。
それらの様々な赤字を訪問介護事業の黒字で補填することでサービス付き高齢者向け住宅の運営が出来ているのです。
だから単純に売上の80%介護士に還元するというわけにはいかないのです。
サ高住や施設で働くということ
従来型と集合住宅併設型の訪問介護事業所で介護士として働く比較をしてみましょう。
従来型であれば、入浴介護が連続するとしても
移動→入浴介助→移動→入浴介助→移動→入浴介護
のように、必ず移動時間が入ってきます。
この移動時間や待機時間は、気分転換になり、体の負担軽減にも大きく貢献します。
ケアが終わるたびに心と身体が少し回復するのです。
それが集合住宅併設型や施設であれば
入浴介助→入浴介助→入浴介助→入浴介助→入浴介助→入浴介助
と言った具合で6~8件連続入浴介助なんてことも当たり前のようにあります。
移動時間が存在しないため、従来型と比べて、同じ労働時間で2~2.5倍ほどのケアをこなすことになります。
人間はロボットではないので2倍働けば2倍以上体に負担がかかります。
合間合間に移動〈気休め・体休め〉が入る従来型の訪問介護と比べると、連続で2倍のケアをこなすと実質的な負担は3~4倍になるのではないでしょうか?
そう考えた時、サ高住で働くということは、従来型と比べて2倍働いて、3倍の負荷に耐え、1.3倍の収入を得る働き方ということになります。
体を壊してしまったり、精神的に苦しくなったり、給料が割に合わないとう感じてしまう介護士が多いのも当然のことかもしれません。
1.3倍ということは年収だと100万円ほどの差になるため、体力がある人にとっては当然魅力的です。
また、サ高住等を併設するということは、会社の規模も大きくなる傾向にあり役職とイスがたくさんあります。
上に利益を持っていかれるということは、見方を変えれば自分が利益を受け取る側になる事もできるのです。
役職を上げ、事業所全体や会社全体から利益を得るポジションに出世することができれば、労働量以上の対価を得ることが出来ます。
出世したい人、向上心の強い人、人の上に立ちたい人は集合住宅併設型や施設で働くことはメリットが大きいといえます。
逆に、出世する気のない人や、介護の現場で利用者と接していたい人にとっては酷な環境かもしれません。
利用者と接する現場の介護士は、構造的に労働に見合わない賃金で働き続けることになるからです。
従来型訪問介護で働くということ
利用者様の住み慣れた自宅を1件1件訪問する従来型訪問介護事業所で働く最大のメリットは
ストレスが少ない事です。
基本的に利用者さまと1対1ですし、近場で上司や部下が監視しているということもありません。そりが合わない上司や嫌な同僚が居たとしても、殆の時間は関係ありません。
また、ケアの合間に移動が入るため、ケアで体を酷使しても回復できます。移動の時間は気分転換と体の回復の時間でもあるのです。精神的にも肉体的にも負担が非常に少ないのが従来型の訪問介護です。
そのため、年令を重ねても現場で働き続けることが出来る仕事です。
確かにサ高住や施設に比べると給与面では20%~30%落ちるけど『身体的にも精神的にも負担は1/3で済み、永く働くことが可能な仕事』と考えれば、実は悪い働き方では無いと思います。
・介護士として現場で利用者と接していたい
・どんどん出世したい訳では無い
・パートや短時間勤務希望
・体力的に無理ができない
・常に見張られているような環境が苦手
そういう人には向いています。
ただ、基本的には小規模の事業所になるため、
・ポジションがそもそも少ない
・サ責や管理者に昇格しても現場に出て働き続ける必要がある
・スケールメリットが少なく役職給が低い
そう考えると、ステップアップすることのメリットが結構薄いです。むしろ、やることが増え、責任が重くなる等のデメリットのほうが大きくなる傾向があります。
そう考えると組織の上に立って大きな収入を得たい人には向いていないと言えます。
結論
サ高住や施設が向いている人
・正社員で出世したい人
・とにかく給料を稼ぎたい人
・体力がある人
・上司や部下や同僚など多くのスタッフと関わりたい人
従来型訪問介護事業所が向いている人
・現場で利用者と接していたい人
・パートや登録ヘルパー希望の人
・体力的に無理できない人
・ストレスや負担を避けたい人
・年齢を重ねても働きたい人