介護保険制度と加算の歴史

介護保険制度の年表

  • 2000年4月: 介護保険制度スタート。65歳以上の高齢者を対象に、要介護・要支援の認定を基にサービスが提供され始める。
  • 2001年: 要支援の認定基準が導入され、軽度の支援が必要な高齢者に対するサービスが開始される。
  • 2006年: 要支援1・2の高齢者向けの予防介護プランが強化され、介護予防の重要性が高まる。特定事業所加算開始
  • 2009年: 介護保険制度改正。介護サービスの提供体制が再編され、より効率的なサービス提供が求められる。介護職員処遇改善交付金(2009~2011まで)
  • 2011年: 地域包括ケアシステムの推進が始まる。高齢者が地域で自立した生活を送れるようサポート体制が整備される(施設から在宅へ)。介護職員処遇改善加算スタート(1人月額3万7千円相当)
  • 2015年: 介護予防・日常生活支援総合事業』が開始され、要支援認定を受けた高齢者の予防サービスが一層強化される。これにより、介護予防訪問介護からの移行が進む。高所得者等の自己負担率が2割にアップ
  • 2018年:介護保険制度改正。高所得者等の自己負担率が3割にアップ
  • 2019年:介護職員特定処遇改善加算開始(10年以上の介護福祉士月額8万UPor年収440万超え)
  • 2021年:介護保険法改正。『地域包括ケアシステムのさらなる推進』『福祉用具レンタル価格の適正化』『介護人材確保及び業務効率化の取組の強化』
  • 2022年:ベースアップ等支援加算(月額9,000円)
  • 2024年:施設報酬をアップ。訪問介護減算により、各家庭へ訪問する小規模訪問介護事業所が苦境に立たされ、高齢者を一箇所に集めて効率的にケアを提供するサ高住等に併設された訪問介護事業所や施設などを運営する大規模事業所を優遇。介護士不足とケアの効率化の観点から『在宅から施設へ舵を切った』かもしれません。

この年表は、介護保険制度の導入から現在にかけての主要な節目を示しており、特に要支援状態の高齢者に対する予防的な介護サービスの変遷がわかるようになっています。各改正ごとに、サービスの質の向上や経済的負担の調整など、様々な側面からの調整が行われてきました。

介護保険制度の流れを把握しよう

(これまでの大まかな流れ)
・介護保険制定前の介護は措置であり、利用者による選択制では無かった
・介護保険を導入し、半強制で国から決められる措置から、自分でサービスや事業所を選択できるようになる。
・『施設から在宅へ』をモットーに、在宅介護サービスを充実させていく事を目指す。
・事業者間の連携が取れていない・相談窓口が市か居宅介護支援事業所しかない・ケアマネは利用者等から相談を受けても、自分のやり方であっているのかを相談する相手が居ない・各事業所が独自解釈で進める事が多く、サービスの質や内容に差が出てしまう等の問題が多発。
・地域包括ケアシステム構想を実現すべく、利用者や事業所の相談窓口として『地域包括支援センター』が出来る。
・地域包括支援センターにより、市役所の仕事量を減らし、事業所の連携や困りごとの相談などがしやすくなる。
・要介護度の低い人を増やすことを目指す(要介護状態になる前に予防に力を入れる)
・介護士の給料を上げることで介護士を確保したいが、事業所には儲けさせたくないので、全額を人件費に充てる必要のある『処遇改善加算』開始。
・介護士が長続きしないので、ベテラン介護士に大幅給与アップの可能性をチラつかせる『特定処遇改善加算』開始。
・2020年頃からのインフレに対応すべくベースアップ加算で給与を更に上げるが加算が多すぎてややこしくなる。
・2024年処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ加算の3つの加算を1つにまとめ『介護職員処遇改善加算』にする。『等』を入れることで介護職員以外の事務員などにも加算を分配可能になる。

今の介護の課題

・介護士に対し処遇改善加算を出しているにも関わらず、介護士不足が解決しない。
・訪問介護に至っては15倍の求人倍率になっているため、訪問介護士は致命的に足りていない。
・今後、より少ない介護士でより多くの高齢者をみる必要がある。
・効率を上げなければならない。

介護業界のこれから(私見)

(今後の訪問介護)
・高齢者を一箇所に集めて効率よくケアを提供できるようにすれば、少ない介護士で多くの高齢者のケアが出来る
・介護報酬を減算することで『移動によるコスト増で崖っぷちの弱小訪問介護事業所を潰す』(今ここ)
・サ高住を建てることが出来る法人は、その高い利益をさらなる建設に投資(数年前から現在進行形)
・数年で小規模訪問介護事業所が殆ど無くなる=介護が必要になれば高齢者住宅へ行くしか無い状態が出来る
・サ高住では移動が無いおかげで、訪問介護士は同じ労働時間でも従来型の2倍働き、2.5倍の売上を出し、1.3倍の収入を得る事ができる
・従来型訪問介護事業所が潰れ、併設型訪問介護事業所だらけとなることで、『訪問介護』の利益率が跳ね上がる。
・併設型訪問介護の高すぎる利益率が社会問題化しヘイトを集め、利益率2%になるように大幅減算を実行できるようになる。
・サ高住では今でのような給与が出せなくなるため、従来型の2倍働き、1.5倍の売上を出し、1.1倍の収入を得る程度にしか稼げなくなる。
国は、高齢者を一箇所に集め、介護士を2倍の効率で働かせつつ、介護報酬も下げることが出来るようになる(目的達成)
・市町村は、弱小事業所が無くなることで管理監督する事業所数が減り管理しやすくなります。
・介護士は、従来型訪問介護のような心身に負担の少ない働き方が出来ないため、体を壊しやすくなり、体力のない介護士は続けられなくなる。

(上記のように考える理由)
今回の介護報酬改定は普通に考えるとおかしいです。『利益ほぼ0の従来型訪問介護事業所』と『利益率30~50%の集合住宅併設型訪問介護事業所』を合算して平均利益率を算出したのです。ビジネスモデルが全く違うものを混ぜたのです。小さな訪問介護事業所は崖から突き落とされたようなものです。
世の中の賃金のベースアップが4%ともインフレ率年間2%もある中で『プラス・マイナス0』というだけで-4%改定しているようなモノです。今後の3年間のインフレを勘案した上でマイナス改定をするというのは、相当えげつないマイナス改定です。
とはいえ、厚生労働省の役人がそのおかしさに気が付かないわけがありません。良い大学を出て、サービスコードを20年間で1745個から2.5万に増やすほど細かい仕分けが得意で記憶力が良く、計算が得意で数字に強い役人が、『訪問介護の利益率7.8%』という数値のトリック(内訳)やそれにより引き起こされる小規模事業所の危機に気がついていないわけがないのです。従来型訪問介護事業所の多くが赤字で、住宅併設型訪問介護事業所が利益率を引き上げていることも知っているに決まっています。厚生労働省や財務省の役人だけでなく、大臣も数字のトリックを知った上で理解した上でわざと「訪問介護の利益率が高すぎるから下げた」と言っているのです。大臣は「基本報酬下げたけど処遇改善加算を上げたから変わらない」とも言っています。
そう考えた時、弱小訪問介護事業所を潰すためにわざとやっているのと考えるしかありません。
国は『施設から在宅へ』のスローガンを見直し、『在宅から集合住宅へ』とスローガンを変え、将来的には従来型の訪問介護を無くし、介護士を効率的に安く使う事を目指し、着実に進めていると考えたほうが良いと思います。

「国は何もわかっていない」とか「国はバカだから」という意見もみられますが、そうでは無く、『国(役人)は賢いから、冷徹に計画を実行している』と考えた方が良いでしょう。
『人を一箇所に集め、そこだけサービスを充実させる(そこ以外はサービスが受けられない)』これはコンパクトシティ構想と同じです。切り捨てられる過疎地等はどんどんとサービスを打ち切られ、限られた財源を中心地に集中的・効率的につかおうという考え方です。一見素晴らしい構想ですが、切り捨てられる地域にとってはかなり厳しい政策です。災害で道路が塞がってもなかなか直してもらえません。インフラのメンテナンスがされず、新しく家を立てることも出来ません。地価は下がり人が住めないエリアに変貌して引っ越しせざるを得なくなっていきます。

従来型訪問介護事業は必要

国や市、財政や社会の事を思うと『人を集めて効率的にケアを提供する未来』が正しい未来の介護(善)と言えなくはありません。しかし『住み慣れた家で最期を迎えられる未来』が不正解(悪)というのも違うと思うのです。

20年近い訪問介護の経験の中で『自分の家で最期を迎えることが出来た人』を何人も目にしてきました。
中には医師から「入院しないと(命が)もたない」と強く入院を勧められたにも関わらず「最期は家で家族と過ごしたい」と断固拒否して帰ってこられ、翌日亡くなった人もいました。確かに数日死が早まったかもしれませんが、殆どの場合で本人も家族も満足しておられました。
アンケートでも「自分の家で最期を迎えたい」と65%近い人が答えています。

この一生最後の願いを叶えるためには、従来型の訪問介護事業所は必要だと私は信じています。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です